「この企業には“堀”があるから強い」と耳にしたことはありませんか?
ここで言う“堀(moat)”とは、他社に真似されにくい競争優位性のこと。
ブランド力や技術力、顧客の囲い込みなど、企業が築いた“防御力”を意味します。
本記事では、「堀の深い企業」とは何か、その具体例や種類、見抜くためのチェックポイントを初心者にもわかりやすく解説します。
長期投資における企業選びのヒントを得たい方は、ぜひ参考にしてください。
こんな方に向けての記事です
- 株式投資を始めたばかりの初心者
- 企業分析に興味が出てきた中級者
- 「長期で持てる株」を探している人
そもそも「堀(moat)」とは?
この考え方は、著名投資家ウォーレン・バフェットがよく使うものです。
企業の堀とは、簡単に言えば「競争に強い仕組み」のこと。他の企業がまねしにくく、その企業が長く利益を出し続けられるような特徴や構造のことです。
たとえば、ラーメン店を出したいなら、店舗と調理器具と材料さえあれば比較的すぐ始められます。一方、石油を採掘して販売したいとなると、油田の権利や莫大な資金、特殊な機械が必要で、一般の人には到底まねできませんよね。
このように「誰でも簡単に真似できるビジネス」と「参入が非常に難しいビジネス」では、市場での安定感がまったく違います。
この“参入障壁”の高さこそが、企業の「堀」なのです。
「堀」の種類にはどんなものがある?
堀にはいくつかのタイプがあります。以下に代表的な5つを紹介します。
1. ブランド力(例:Apple、コカ・コーラ)
消費者に強く印象づけられているブランドは、少々価格が高くても選ばれ続けます。
たとえばスマホ市場にはGoogle Pixelなどもありますが、Appleのブランド力にはまだ及びません。洗練されたデザインや「持っていること自体が価値」と思わせる力が、Appleの堀となっています。

2. 規模の経済(例:Amazon、Costco)
たくさんの商品を仕入れて一括で売ることで、1つあたりのコストを下げられる仕組みです。
この「量が多いほど強くなる」モデルは、小規模の競合が太刀打ちできません。

3. ネットワーク効果(例:LINE、Meta)
利用者が増えれば増えるほど、そのサービスの価値が高まる仕組み。
たとえば、LINEを使っていないと不便な場面が多いため、「皆が使っているから自分も使う」という流れが強くなり、後発サービスが入り込めません。

4. 切り替えコストの高さ(例:Microsoft、Adobe)
いったん導入されたら、他社製品に切り替えるのが面倒なサービスも堀の一種。
ExcelやWordからGoogleスプレッドシートに完全に移行するのは、特に企業にとって手間もリスクもかかるため、切り替えられにくいのです。

5. 特許や独自技術(例:製薬会社、半導体企業など)
特許を持っていると、その技術を一定期間独占できます。
たとえば新薬の開発に成功した企業は、その薬を一定年数、他社に真似されずに販売できます。技術力=堀になる代表例です。
堀の深さを見抜くには?
では、投資するうえで「堀のある企業」をどう見分ければよいのでしょうか?
以下のような視点でチェックしてみましょう。
- 収益の安定性:売上や利益が長年安定しているか
- 営業利益率の高さ:他社より効率的に稼いでいるか
- 顧客のロイヤルティ:「この会社じゃないと困る」と思われているか
- 市場シェアの推移:時間がたっても強いポジションを維持しているか
- 理由を説明できるか:「なぜこの企業が選ばれ続けているのか?」に答えられるかどうかが重要です。
「堀が浅い企業」の見分け方と注意点
反対に、堀が浅い企業には以下のような特徴があります。
- 価格競争に巻き込まれやすい(他社と差別化できていない)
- 商品やサービスが簡単に代替される(例えば安価なノーブランド)
- テクノロジーの進化で優位性がすぐに崩れる(例:かつてのガラケー、DVDレンタル)
こうした企業は、一時的には利益が出ても、長期では厳しい状況に追い込まれやすくなります。
時代の変化が早い現代では、「今ある堀」も簡単に崩れるリスクがあることを忘れてはいけません。
堀の深さ=長期で勝ち続ける力
「堀の深い企業」は、競争の激しい市場でも安定して利益を出し続ける力を持っています。
- 真似されにくい
- 顧客に選ばれ続ける
- 市場の中でポジションを守れる
これらは、すべて“堀の深さ”につながります。
短期的な業績ではなく、「5年後、10年後にその企業がまだ選ばれているか?」という視点で企業を選ぶことが、長期投資では特に重要です。
企業分析に少しずつ慣れてきたら、ぜひ「堀」という視点を意識して銘柄選びをしてみてください。
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